投資レポートの読み方(リテール向けレポート編)

投資全般

先日機関投資家向けに発行された「投資レポート」の読み方について記事を書きました。今回はより身近なリテール向けの「投資レポート」について書いていきます。

リテール向けに書かれた投資レポートについて

注意!
注意!

現在、自分の取引しているネット証券ではリテール向けの投資レポートがありません。なので直近書かれたリテール向けの投資レポートは読んでいません。なのでもしかしたら事情は変わっているかもしれません。

要点

証券会社や運用会社の投資レポートは知識を深める為だけに使うべきで、その投資判断を真に受けてはいけない。

結論は機関投資家向けに書かれたレポートの読み方と同じです。

機関投資家向けレポートの読み方については「投資レポートの読み方(機関投資家向けレポート編)」を見てね。

投資レポートの種類

証券会社や運用会社が扱っている投資関連のレポートというのは大きく分けて2種類あります。

一つは機関投資家向けのレポート(運用会社においては社内用のレポートとなります)。もう一つはリテール向けのレポートです。

リテール向けのレポートはその名の通り、一般の投資家に見せるのを前提に作られています。ただし、基本的には自分の顧客に見せるのが原則ですから、HPに掲載されているようなことはほとんどありません。

個別銘柄ではなく、全体的な投資環境についてのレポートなんかだとHPに掲載されていることもありますね。

ちなみに前回も書きましたが、私は機関投資家向けレポートを証券会社、運用会社で各4年、リテール向けレポートを証券会社で半年ほど書いていたことがあります。

リテール向けレポートの存在意義

リテール向けレポートの存在意義はいたってシンプルです。

顧客に株(またはリートや投資信託)を買ってもらうための材料です。

ここでポイントになるのは、”売る”材料ではないということです。

どういうことかというと、証券会社や銀行などの金融商品の販売会社は、株やリートもそうですが、特に投資信託を個人投資家が買った際の販売手数料で儲けているからです。

金利が低下して本業での利益が薄くなってきた銀行や、ネット証券との競争で株の売買手数料率が低下した証券会社は、近年投資信託の販売手数料収入への依存を高めています。

ただ投資信託を売るだけで売り上げの3%の手数料が入ってくるなんて、今の金利環境を考えたら途方もない収益よね。

なので、販売用資料としての投資レポートは買いの材料しか基本的に書いていません(個別株のレポートだったら投資判断は”Buy”ばかりですよね)。

あなたは”売り”を推奨しているレポートを読んだことがありますか?

銀行、証券会社それぞれ口座を持っていたりすると色々なレポートがHPを通じて提供されているはずです。運用会社は自社の投資信託に関係する投資環境についてのレポートなんかをHPに掲載しています。

現在投資をされている方で、そういったレポートを読んだことがあるという人に質問です。

明らかに”売り”を推奨しているレポートって読んだことがありますか?

恐らくないはずです。

誰もがまずいんじゃないか?という時でも”売り”推奨はしない

ある程度投資歴がある人なら覚えているかもしれませんが、2007年末頃から米国でサブプライムローン問題というのが話題に上がってきました。

話題が出てきた当初はあまり気にかける人はいませんでしたが、2008年にかけて株価はかなり下落しました(最終的には2008年9月のリーマンショックにつながり株価は大暴落したのは有名な話ですね)。

この株価が下落している過程でも、ネガティブなレポート(”売り”のレポート)というのはほぼ無かったと記憶しています。大体が、「悪材料ではあるけどそれほど大きな問題にはならない」、「株価は一時的な調整をしているだけで、じきに反発する」といった甘い見通しのレポートばかりでした。

そしてリーマンショックが起こっても、何が起こっているかの解説が書かれたレポートはあったものの、それでも”売り”レポートというのは出ないのです。

”売り”レポートを出されると困る人達

何で”売り”のレポートって発行されないんでしょうか?

それは”売り”レポートが出ると困る人がいるからです。

例えば、これからリーマンショックみたいなことが起こりそうだとします。そしてそれを理由に株も債券もリートも投資信託も全面的に「売ったほうが良いですよ」というレポートが出たとします。どうなるでしょうか?

現在株や投資信託を保有している投資家が不安になる

これが銀行や証券会社が主張する建前です。投資家をいたずらに不安にさせるようなレポートを書くなと言ってきます。

建前にしてもあまり筋が通ってないわね。

不安になった投資家への対応で信用を失うリスク

特に対面販売をしている証券会社や銀行などは、自分の顧客から問い合わせがあれば当然対応しなければなりません。でも、全員が全員投資や投資環境について十分な知識がある訳ではないのです。

というより、一般の人並という営業員の方が多いと思います。

中にはその”売りレポート”が出る前日に株や投資信託を推奨して買ってもらった営業員もいるでしょう。そんな中で”売りレポート”が出たらどうなるか?

当然混乱しますし、そうした中でうまく説明できなければ顧客からの信用を失う事になるケースも出てくるでしょう。そういうことを当然ながら証券会社や銀行は嫌います。

不意に思い出したお話

如何に営業員の知識が無いかというのが垣間見えるエピソードを一つ思い出したのでご紹介します(かなり前の話です)。

私はその時、リテール向けに電子部品を作っている企業の買い推奨レポートを書いていました。その企業は自動車部品の「コネクタ」を作っている会社だったのですが、流石に「コネクタ」位分かるだろう(もしくはネットで調べれば分かるだろう)という認識で特に注釈は入れていませんでした(そもそも買い推奨の理由はコネクタそのものにはありませんし)。

そうこうしている内に、支店の営業員から問い合わせが入りました。その内容が「コネクタ」ってなんですか?というもの。

私は「へ?」と思いながら、「読んで字のごとく配線同士を複数同時につなぐものです」といったようなことを答えたんですが、相手はピンと来ていないらしく、しょうがないから「自動車のボンネットを開けたことがありますか?そうすれば何個も見ることができるのですが」と言ったら「ボンネット開けたことが無いから分かりません」と・・・

結局分かってもらえず電話は切れたのですが、そもそも買い推奨の本筋は理解できてるのか?というのが心配になるような問い合わせでした。

でも、営業員の大半はこんな人だと思いますよ。ちなみに大手の銀行系証券会社ですよ。

そもそも売り推奨したら損をする

これは投資信託に限定される話なのですが、銀行や証券会社は、投資信託を販売するときに販売手数料を取りますが、投資家が保有している間も期間に応じて信託報酬を取っています。

なので、投資家が投資信託を売る(解約する)と収入が減ってしまうのです(解約するときは手数料も取れませんし)。

売り推奨されたらベアファンドを売ったり、株の信用売りを進めれば良いのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、ショートの意味が分かる一般の投資家ってほとんどいないんですよ。

当然ゆがむレポートの中身

こんな感じでリテール向けの投資レポートは”買い”にバイアスがかかっています(楽観的なレポートが多いです)。

というより楽観的に書けないようなものは書きません。個別銘柄のレポートならそもそもその銘柄を扱わない。投資環境であれば「そういった悪材料もあるけど、あくまでも一時的な問題で、他の好材料があるから大丈夫」といった具合ですね。

大人の事情で書かなければいけなかった買い推奨レポート

私は証券会社でリテール向けのレポートを半年ほど書いていたと言いました。ちょっと短いと思います?というのも嫌になってすぐ辞めちゃったんですよね。

きっかけはこんなことです。

自分のいた証券会社がとある銘柄のIPO(株式の新規公開)の主幹事になったんです。当然その株は最優先で売らなければいけません。そこで投資レポートを書く私がいた部署に「買いレポート一丁頼む」という依頼が来るわけです。

で、私が指名されたわけですが、どう贔屓目に見ても将来性が薄いし、事業に魅力が無かったんです。でも、「買い」のレポートを書かないといけないんです。

しょうがなく、無理やり買いの材料を見つけてそれをメインに文章を書いたわけですが、どうにも気持ちが悪いんですよね。ちょっとでも良いから「要警戒」というニュアンスを出したくて、悪材料も書きました。

どうなったと思います?

部長大激怒&悪材料部分全削除ですよ。

当時の投資家の方には申し訳なかったですが、そういったレポートを一つ流してしまいました。

ちなみに、このレポートを書いた1週間後位だったかな?こんなことは続けられないと思い、会社を辞めました。

後先考えずに辞めて、拾ってくれる会社があってよかったわね。

リテール向けレポートの読み方

これまで書いてきたように、リテール向けのレポートはかなり”買い”にバイアスがかかっていることが分かってもらえたかと思います(レポート以外でも投資信託の販売用資料なんかもそうですね)。

なので当たり前のように「買い推奨」については参考にしても意味がありません。

内容についても、自分の保有している銘柄について良い材料を読んで安心するといった使い方が一番適しています。もしくは他の理由で買う意思決定をしたあと、最後に背中を押してもらう意味で読むとかですかね。

特に悪材料については書いていないか、書いていてもそれが「事実」なのか「市場の見通し」なのか「書き手の感想」なのか判然としないような書き方になっているものもあります(ぼやかしている)。

なので悪材料(売るための情報)はニュースやネットなどから多角的に情報収集した方が色々得られるのではないかと思いますよ。

最後は当たり前の話に落ち着いてしまいました。

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