AI(人工知能)が運用するAI投信は発展途上?

投資信託・ETF等

AI(人工知能)と聞くと何でもできる、全ての面において人間より優れているといったイメージが出来つつあります。代表的なのはチェスとか囲碁、将棋ですかね?この辺りは既に人間はAIに勝てないのだとか。日本の投資信託もAIで投資判断をしているファンドが登場しています。こちらも既に人間は完敗状態なのでしょうか?

この記事のポイント
  • AI(人工知能)は発展途上の技術。少なくとも日本のAI投信の運用成績は悪い。
  • 本当に凄い技術なら、それが確立されてから投資すれば良いのでは?
  • 日本人は新しい物好きだからこういった投資信託に飛びついてしまうが、実績もないものに大事なお金を預けていいか今一度考慮すべき。

AI投信とは

ここでは「AI投信」をAI(人工知能)を投資判断に活用している投資信託とします。

具体的には、設定からそこそこ時間が経過している以下の3ファンドをみていきます。

  • アストマックス投信投資顧問「Yjamプラス!
  • 三菱UFJ国際投信「AI日本株式オープン(絶対収益追求型)
  • ニッセイアセットマネジメント「ニッセイ日本株AIセレクトファンド(年2回決算型)

AIの技術に関連した銘柄に投資するテーマ型投資信託とは違うわよ。

AI投信の”売り”

AI投信の売り文句なんかをみていると、投資判断をAIに委ねることのメリットはいくつかありそうです。

AI投信の”売り”
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  • AIは人では処理できないような大量の情報(企業の財務情報、新聞やネット上の文字情報など)を素早く分析・蓄積することが出来る。
  • AIは蓄積された過去の膨大なデータから、現在の相場との類似性を探し、今後の予測ができる。
  • AIは人のように思い込みに左右されず判断できる。

情報の処理自体はファンドマネージャーもやってるけど、その量は比較にならないね。

基本的に「人間にはとても出来ないような大量のデータを処理して投資判断に用いる」ということが根底になっているように思えます。

ちなみに、投資判断に用いるデータが”多ければ多い程”成績が良いという根拠は示されていません。

AI投信って運用成績良いの?

AIが運用する投資信託ってなんだかすごそうですよね。チェスみたいに人間ではとても太刀打ちできないような成績を上げているのでしょうか?個別に見ていきましょう。

アストマックス投信投資顧問「Yjamプラス!」

運用会社はマイナーなんですが、確か日本初のAI投信だったと思いますので取り上げてみたいと思います。

ファンドコンセプト(抜粋・意訳)

ファンドの目的:持続的・安定的に市場プラスアルファの収益をめざします(月次レポートより)。

どこにも明確に書いてありませんが、月次レポートではTOPIXとパフォーマンスを比較していますので、市場というのはTOPIXと思われます。

ファンドの特色

  • 投資対象は国内外の株式
  • AIを活用したビッグデータの解析、株価の予測等を通じて、継続的な運用の強化・充実を図る。
  • AIは株式会社Magne-Max Capital Management(マグネマックス・キャピタル・マネジメント)のものです。この会社はヤフー株式会社の子会社です。
  • 外貨建て資産は原則として為替ヘッジを行います。

外国株式にも投資できるようになってるみたいだけど、運用報告書などを見ると国内株にしか投資してないわね。

一言でまとめると、「AIを使って日本株でアクティブ運用してTOPIXに勝つ運用を目指しますよ」といった所。

パフォーマンスは?

このファンドは2016年12月20日設定ですので、2年半以上の運用実績があります。その結果は以下の通り。

「Yjamプラス!」の運用成績

ちょっとだけ調子が良い時があったみたいですが、ほとんどの期間で市場(TOPIX)に負けています。設定来の約2年7カ月間ではTOPIXに2.2%pt負けです。

ちなみにTOPIXは配当を含まない指数だから、実質はもっと負けてるわよ。

パフォーマンスが悪くて、しかも言っては悪いですが、かなりマイナーな運用会社にも拘らず300億円も売れてるって凄いですね。

約2年半で4.6%も上がってるなら上出来じゃない?と思った人は前に書いた記事「投資信託は何をどう評価すれば良いのか?」を見てね。

AI日本株式オープン(絶対収益追求型)

大き目な運用会社で、AIはあの三菱系列の企業のものです。かなり期待できるんじゃないですか?

ファンドコンセプト(抜粋・意訳)

ファンドの目的:国内株と株価指数先物に投資を行い、絶対収益の獲得を目指す。

こちらの投信は国内の現物株を買って、指数先物を売り建て、マーケットニュートラル風に運用して絶対収益を狙うファンドですね。

絶対収益ってことは、相場全体が下がった時でもこのファンドは上がるってことよね?

それを目指しているだけだけどね。

ファンドの特色:

  • AI等を活用して運用を行います。
  • AIは三菱UFJ信託銀行及び三菱UFJトラスト投資工学研究所(MTEC)のものです。
  • AIは「株式個別銘柄戦略」と「先物アロケーション戦略」の2つの運用戦略を実行します。
  • モニタリング等においてより適切と判断した場合には、新たなモデルの採用や入れ替え等を行います。

なんか説明の絵を見てると、「モニタリング等においてより適切と判断した場合」って人間の判断みたいに読めるんですが・・・どうなんでしょ?

パフォーマンスは?

AI日本株式オープン(絶対収益追求型)の運用成績

始めのうちにちょろっと10,000円を超えてた期間がありますが、基本的に負けてますね。というより特にここ1年位は酷いですね。

絶対収益追求型のファンドは基準価額を見ると一目でダメなファンドかどうかが分かっちゃうから残酷だね。

流石に一時は120億円近くあった残高も足元は半分の60億円程度まで資金が流出してるわね。

ニッセイアセットマネジメント「ニッセイ日本株AIセレクトファンド(年2回決算型)」

このファンドは比較的新しめです。決算頻度の異なる(資産成長型)だと運用報告書がまだでていないので(年2回決算型)を見ていきます。

ファンドコンセプト(抜粋・意訳)

ファンドの目的:日本株を主要投資対象とし、信託財産の中長期的な成長を図る。

ファンドの特色:

  • AIを活用した独自の計量モデルを用いて、株価上昇が期待される銘柄を選別します。
  • 独自計量モデル・・・経済データ・財務情報等に基づく業績予想や証券会社等のアナリストレポートのテキスト解析など、AIを活用した複数の計量モデルにより、各銘柄の投資魅力度を定量化します。

ファンドとしての目的が明確じゃないですね。売建てが出来ないファンドなので絶対収益型ではありません。アクティブファンドなら何らかの指標に勝つことを目的にしているはずですが・・・

まぁ日本株のアクティブファンドだからTOPIXと比べればいいんじゃない?

パフォーマンスは?

ニッセイ日本株AIセレクトファンド(年2回決算型)の運用成績

上図は私が勝手にTOPIX対比させたものですが、設定来の約1年間でTOPIXとほぼ同じパフォーマンスとなっています。ただ、TOPIXの配当利回りは2.5%程あるので、これで勝っているかというとちょっと微妙ですね。

ちなみにこのファンドは残高(300万円ちょっと)を見ればわかる通り、それほど積極的な販売はしてないようです。

AI投信の難点

上記の3ファンドの運用成果をみるとどれもぱっとしないというより、悪いですね。

パフォーマンスが悪いというのは投資信託として決定的な弱点ではあるんですが、私はそれ以外にも問題だと思う点があります。

何故運用成果が悪いのかが分からない

こんなことを運用会社が書くわけにはいきませんから、普通のファンドと同じようなことが書いてありますが、AIファンドってなんで成績が良いのか、悪いのかよく分からないんですよね。

考えてみればもっともな話だと思いますけど、AI投信は人間では不可能な膨大な量の情報を処理して投資判断をしています。だから、何をもってその銘柄を買ったのか、売ったのかが外から見た人間には分からないんですよ。

なのでAIが買った銘柄が下落したとき、AIが何を間違ったのかも分かりません。

そして、AIはその間違い(?)から学んで、次は勝つようになっていくのかといったことも分かりません。

AIは個別銘柄一つ一つを当てに行ってるのではなく、統計的手法でたくさんの銘柄全体で最終的な勝ちを目指しているのかもしれません。

そうなると運用成績が悪い時の理由が更によく分からなくなるわね。

運用報告書で運用担当者のコメントなんかを見れば一目瞭然。中には無理やり理由を付けて書いてるところもありますけどね。

AIを人に例えてみたら・・・買いますか?

とあるファンドマネージャーがいたとします。そのファンドマネージャーの親戚はチェスの世界では誰にも負けない世界トップの実力者だそうです。

そのファンドマネージャーが運用する投資信託は投資対象こそ明確にしていますが、どうやって運用するかはざっくりとした概念しか説明されていません。もちろん運用実績もありません。「まぁとにかく上手いことやるから私にお金を預けてみて下さい」という投資信託。

そんな投資信託に大事なお金を預けていいんですか?

しかもお金を預けた後、運用成績が振るわなくてもその原因は不明確で、不明確故にその後どうしていくのか方向性も示されないんですよ。

今後どうしていくのか説明されないと、今後運用成績が回復するのかどうか判断できないわよ。

新しい投資信託を買うべきなのか?

これはAI投信に限った話ではないのですが、何故か日本では運用実績のない新しい投資信託の方が売れる傾向があります。

日本人は新しい物好き?

これ、私が金融の世界で働いていた時からずっと不思議だったんですが、投資信託って新しいものの方が売れるんですよ。

普通こういうものって、過去の実績があって、これまでもずっと優秀だったから今後も優秀であろうという見通しの元で購入するのが普通の投資判断だと私は思います。

でも、何故か運用実績がある古い投資信託は売れず、新しいものがもてはやされます。

まぁずっと好成績というファンドが無いからかもしれませんが。

そして、日本人は新しい技術も大好きですよね。だから、どんなパフォーマンスが出るか全くわからないのに、AI投信という名前だけで買っちゃいます。

上記の3ファンドだけでざっと見ても400億円位のお金が流入しています。

結果は見ての通りよ。

運用会社もろくにテストせず実践投入

運用会社側もこういう新しい技術を投入するなら、まずは自己資金なんかで何年か運用してみて、しっかり数字が出せるようになってから市場に投入すべきです。

なのに、目新しいものが売れるというだけですぐ商品化してしまいます。要するに自分たちが儲かれば良いという考え方ですね。

普通の工業製品(例えば自動車)なんかが新しい技術を投入するときはものすごい数のテストを重ねています。

実際全くテストしてないってことはないんでしょうけど、どこまでやったの?って感じよね。

今後もAI投信は増えるかもしれませんが・・・

私はAIの中身については全くの素人です。もしかしたらAI投信は今後短期間で物凄く進化して、人間では太刀打ちできない成果を出し始める日が来るのかもしれません。

でも、そうなったらそうなったでめでたいですし、そうなった時に買えばいいんじゃないですか?なにも自分のお金で運用会社にテストさせてあげることないじゃないですか。

まぁこんなこと書いてますが、少なくとも自分が生きている間にそんなことは起こらないと思ってます。

AI以外でも今後目新しいものが出てくるかもしれないけど、真っ先に飛びつくのはやめておいた方が良いわよ。

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