ビールを手作りした際、周辺知識を調べていたらビールを発酵させるのに使った酵母がパン作りにも使えるという事が分かりました。ビールを作った時の酵母は捨ててしまったのですが、ちょっと興味が出たので天然酵母を作る所からやってみました。
天然酵母を作ってパンを焼くとコスパはどうなる?
今回は酵母から全て手作りしたパンを焼いてみました(今回はイースト菌ではなく、酵母と呼びます)。
ちなみにホームベーカリーで焼くことを前提にしてるわよ。
酵母とは?
英語でYeast(イースト)は日本語では酵母と訳されますが、本来の意味は「発酵を起こす菌類の総称」で、パンを発酵させる特定の菌を指す言葉ではありません。
酵母はどこにでもいて、果物の表面にもいます。なのでブドウは潰して放置するだけで勝手に発酵してワインになる訳です。
一方、パン作りに用いられる市販のイースト菌(ドライイースト)も酵母の一種です。ただこちらは数多く存在する酵母の内、特にパン作りに適したものを選定し、純粋培養されたもののようです(パン生地が早く発酵したりといったメリットがある)。
これまで何の疑問も持たずに、パン用のドライイーストを使っていましたが、手作りビールで身近になった天然酵母を使ってパンを焼いてみたくなりました。
パン作り自体は余計時間がかかるみたいだけど、美味しいものが出来るみたいよ。
天然酵母でパンを作るメリット・デメリット
上に書いたように天然酵母は(種類が)無数に存在します。酵母によって個性が異なることから発酵時間が違ったり、出来上がったパンの風味も変わったりします(品質が安定しないので商業的に作られるパンにはあまり使われないようです)。
ちょっと聞くとデメリットのように聞こえますが、毎回作る度に違うものが出来るというのは別の楽しみ方も出来るような気がします(いつかとんでもなく美味しいパンが焼けるかもしれません)。
また調べても理屈は分かりませんでしたが、天然酵母で焼いたパンは日持ちが良いみたいです。
酵母も手作りするとなると添加物の心配が一切必要ないパンが出来るわね。
天然酵母でパンを作った時のコスト
正直コストの面では天然酵母から手作りするメリットは薄いと言わざるを得ません(考え方次第?)。
というのも、ドライイーストを使ったパンと天然酵母から作るパンの違いはほぼこの両者の違いのみだからです。
私が普段利用しているドライイーストはカメリアのもので、1回に3g使っています(3gづつ小分けされたものが10袋入って322円なので1回分は32.2円)。
これに対して今回作った天然酵母は梨(1個164円)から作ったのですが、皮と芯を主に用いて果肉は1/8しか使わなかったのでコストは20.5円となります。
という事で食パン1斤当たりだと12円位しか節約は出来ません。
ホームベーカリーで焼いたパンのコストは以前計算していて、1斤当たり167円でした。なので天然酵母パンは一斤155円ということになり、節約効果は限定的です(引っ越しに伴ってドライイーストの調達単価が変わっているのでざっくりした数値です)。
天然酵母は果物の食べない部分からも作れるし、パンの元種にすれば無限に増やし続けられるからコストをゼロと考えることも出来ます。
考えようによっては節約ともいえるけど、基本的には趣味の世界ね。
天然酵母で作ったパンのコスパは?
上記の様に天然酵母で作ったパンはドライイーストを使うより多少なりとも安くは出来ます。
コストが上がらないなら味さえよければコスパは良いってことになるんじゃない?
下の方に詳しく書きましたが、今回天然酵母で焼いたパンのお味は「絶品」という程ではありませんでしたが、少なくとも「悪くない」という出来にはなりました。
初回作成には時間もかかりますから「趣味の世界」であることは確かですが、その辺を抜きにするとコスパは良いということになるんじゃないかと思います。
天然酵母でパンを作る手順
天然酵母でパンを作る手順は大まかに3工程に分けられます。
- 酵母作り(5日位)
- (パンの)元種作り(3日位)
- パン生地作り⇒焼き(7時間位)
私の持っているホームベーカリーには天然酵母を使うコースがありますが、ドライイーストを使う通常のコースだと4時間で焼き上がるのに、天然酵母コースだと7時間かかります(発酵に時間がかかる)。
全体を合わせるとかなり時間がかかるわよ。
酵母作り
酵母はどこにでも存在するため、作るのはかなり簡単です(ただ時間はかかります)。様々なものから作れるようですがフルーツから作るのが簡単みたいです。
私は普段ほとんどフルーツを食べませんので最初はレーズンを買ってきて作り始めましたが、なかなかうまく育ちませんでした(最終的には出来ましたが時間がかかりました)。
レーズン酵母が中々育たなかったので、ネットで発酵力が非常に強いと書いてあった「梨」を買ってきてやってみた所、すぐ育ったので今回は梨酵母で進めていきます。
手順はとても簡単です。殺菌した容器に梨の皮や芯、果肉と水を入れて放置するだけです。
1日1,2回は蓋を開けて空気を入れ替えてから容器を振る必要があるみたいよ。
酵母作りの手順1
梨を切った時のあまりの部分(皮と芯)と水を消毒した容器に放り込みます。
分量は特に計っていません。水は梨が浸る位でOKです(発酵してガスが発生するので容器の上部には隙間を残します)。
- 酵母は果物の表面に付着しているので、なるべく洗わないようにした方が良いようです(どうしても心配な場合は軽く水で流す程度にする)。
- 酵母が付いてるのは皮なので皮は必須です。また酵母の餌となる糖分も必要なため果肉部分も投入します(これは芯の部分などでもOK)。私は入れませんでしたが糖分は砂糖や蜂蜜などで補ってやっても良いらしいです。
- 水はミネラルウォーターを推奨してる人が多いですが、私はいったん沸かして冷ました水を利用しました(酵母が増えるのに邪魔な塩素を除去するだけならこれでOK)。
※このガラス容器はダイソーで110円で売っていたものですが、注意書きを見ると煮沸消毒不可だったので、アルコール消毒して使っています。
基本的には皮と芯の部分で、果肉は1/8だけ入れて後は食べちゃいました。
酵母作りの手順2
上記で仕込んだものを常温で暗所に放置します。
1日に1,2回、一度ふたを開けて新しい空気を取り入れてから蓋を閉じて軽く振ります(酵母が育つのに酸素が必要なため)。
- 梨酵母はネットの評判通り強力で、昼に仕込んだら夕方には発泡していました。
- この写真は3日目ですが、炭酸飲料の様にシュワシュワしていました。
- 匂いの変化は梨の香りがほぼ無くなり、アルコールっぽい匂いに変わりました。
実は先に始めたレーズンは5日経ってようやくちょろちょろ泡が出てきた感じで、立ち上がりが遅かったのよね(初心者にはレーズンがお勧めっていろんな所に書いてあったから始めたんだけど・・・)。
酵母作りの手順3
十分酵母が育ったと判断したら、皮や芯などを取り出します。調べると特に取り出す必要は無いようですが、見た目が悪くなってくるので私は取り出しました。
- 何をもって「酵母が十分育った」とするかは人によって違うみたいです(泡が出始めたらOKとする人や、バンバン泡が出てきたらOKとする人等)。
- 私は炭酸飲料の様にシュワシュワ言い出してから2日程置いて完成としました(その時点ではまだシュワシュワしてました)。仕込みからは5日後のことです。
- このままの状態で冷蔵庫に入れると1カ月ほどは保存できるそうです。
今回写真は載せてませんが、梨酵母はレーズン酵母に比べて見た目も非常に良くて、このまま飲んじゃいたい位でした。
この酵母液を100%のぶどうジュースに混ぜて放置するとどうなるんでしょう?(好奇心に負けてやってしまいそうだわ!?)
元種作り
ここからは各材料の量も記載しておきます。
材料の量は最終的なパンのレシピから逆算してます。
この「元種」(中種ともいう?)という概念が私には最初ピンとこなかったのですが、どうやら上記で作った天然酵母はまだ発酵力が弱く、そのまま小麦粉と一緒にホームベーカリーに突っ込んでも発酵があまり進まずパン生地が膨らまないみたいです。
ここからは色々調べた末の私の理解なんですが、恐らく新たに起こした酵母って様々な種類の酵母がちょっとづつ存在するだけなんだと思います。小麦を分解して発酵させる酵母はその中の更に一部に過ぎず、絶対数が少なすぎて発酵力が弱い状態になっている。
よって起こした酵母を予め小麦粉と混ぜて事前に発酵させることで、小麦粉を発酵させるのが得意な酵母を増やしていく工程が「元種」を作るということなんじゃないかと理解しました(正しいかどうかは分かりません)。
元種作り1日目
アルコール消毒した容器に以下の材料を投入
- 作った酵母液・・・50g
- 強力粉・・・50g
酵母を活性化させるためには全粒粉の方が良いと言ってる人が多いですね。
家には無かったから強力粉を使いました。
酵母液と強力粉が混ざったら蓋をして室温で暗所に放置します。
長い時間放置するのであまりよく混ぜなくても良いと思います。
(室温25℃位で7時間後)十分発酵したら蓋をして冷蔵庫で一晩放置。
通常、十分発酵したかの目安は容器を横から見てどの位嵩が増したかでみますが、容器が大きすぎてよく分かりませんでした。
まぁ泡も出てるから発酵はしてそうだけど、十分とは言えなそうね。基本的にはこの工程を3回繰り返します(2工程目から酵母液は水でもOK)
元種作り2日目
冷蔵庫で一晩寝かせた元種へ以下の材料を投入
- 強力粉・・・75g
- 水(水道水)・・・75g
今回も程よく混ぜます。
この状態で前日と同様に室温で放置します(室温27℃位で7時間放置しました) 。
2日目で酵母が元気になったからでしょうか?
今回はよく膨らみました(倍どころじゃなさそうです)。
この後は冷蔵庫で一晩寝かせます。
この位発酵すれば十分な気もしますが・・・
量も少ないからもう1回やるわよ。
元種作り3工程目
冷蔵庫で一晩寝かせた元種へ以下の材料を投入
- 強力粉・・・75g
- 水(水道水)・・・75g
今回も程よく混ぜます。
この状態で前日と同様に室温で放置します(室温26℃位で7時間放置しました) 。
昨日よりさらに明確に良く膨らみました。
これで元種完成とします。
今回は同じ工程を3回繰り返しました。ネットで調べると2回の人もいましたが、3回繰り返す人が多いようなので私も3回にしました。
この元種はパンを作れば減りますが、この方法を繰り返せばずっと維持することが出来ます(最低2日に1回位繰り返すと無限?に増やせるようです)。
パン生地作り⇒焼き(ホームベーカリー)
パンを焼くのにはホームベーカリーを使いました(毎回手でコネてオーブンで焼くというのはできそうに無いので)。
ここまでやる人は大抵オーブンで焼くから、ホームベーカリーを使う例はネットじゃあんまり出てこないのよね。
やはり酵母から手作りしようという人は、自分で生地をコネて、成形して、オーブンで焼くという人がほとんどです。なのでネットで調べてもホームベーカリーを使った例がほとんど出てきません。
ポイントは天然酵母だと発酵に時間がかかるので、ホームベーカリーだと十分に膨らむ前に焼いてしまって失敗する可能性が高いという点です(十分発酵するのを待っていることが出来ない)。
恐らくドライイーストを使用するのが前提の設定ではどうやっても上手くいくことは無いと思われます(手作り酵母を市販のドライイースト並みの発酵力にすることは不可能?)。
私の持ってるホームベーカリーは天然酵母を使うのを前提としたコースがメニューにありますが、それでも市販の天然酵母(恐らく自分で作ったものより発酵力は高い)を使う事が前提となっています。
なので、今回は上にあるような「十分な発酵力がある元種をどの位混ぜたらホームベーカリーでも旨く焼けるのか?」を試してみたって感じですね。
ちなみに元種を混ぜる比率は一般的には30~40%位らしく、100%元種で焼くことも可能なようです(元種の比率によって風味が変わって来る)。
今回は「このレシピで一応成功しましたよ」というお話になってしまいます。
同じようにやっても次回は失敗するかもしれません。
パン焼き(レシピ)
基本的にレシピはホームベーカリーのレシピに準じています。
私のホームベーカリーの場合、天然酵母パンのレシピは以下のようになっています(ちなみに天然酵母は市販の発酵力が高いものを使用する前提のレシピです)。
- 強力粉・・・300g
- 水・・・200g
- 砂糖・・・17g
- 塩・・・5g
- バター・・・10g
このレシピの一部を元種で置換する訳です。今回は強力粉換算で30%を元種に置き換えるのでレシピは以下のようになります。
- 強力粉・・・210g
- 水・・・110g
- 元種・・・180g(強力粉90g+水90g)
- 砂糖・・・17g
- 塩・・・5g
- バター・・・10g
ちなみに元種の比率を上げれば上げるほど発酵力は上がりますが、小麦の香りが減って発酵の進んだ香りが強くなるそうです。
ちなみに今回元種を合計で400g作ったけど、パン焼き2回分相当を狙って作りました(使い切らずに継ぎ足していくかもしれないけど)。
材料をホームベーカリーに入れてスイッチオン!
家にあるホームベーカリーだと、天然酵母コースは約7時間かかります(ドライイーストだと4時間)。
この写真は最初のコネが終わったところです。
こちらが翌朝の焼き上がりです。
ちょっと膨らみ方が足りないみたいですね。
焼き上がり
全く膨らんで無いという事も無く、触った感じは普通のパンという感じです。
何よりドライイーストの匂いがしないのが新鮮ですね。
食感はネットにあった通り「もっちり&しっとり」といった感じでした。
焼き立てでもミミの部分がカリっとしてるのではなく、しっとりした感じというのは初めての体験ですね。
まぁ膨らみ方は不十分だったけど一応成功って感じかな?
普通に美味しかったし、成功で良いんじゃない?(次回は元種の比率をもう少し上げてみようかしら?)
天然酵母で作ったパンのお味は?
ドライイーストを使ってパンを焼いた人なら分かると思いますが、ドライイーストって独特の匂いがしますよね。
私は今回天然酵母の焼き上がりの匂いを嗅いで、初めてホームベーカリーを買ってパンを焼いた時、部屋に充満したパンの焼ける匂い(ドライイーストの匂い)を「臭い」と感じたことを思い出しました。
時と共にその匂いはパンの焼ける「良い匂い」と頭の中で変換が進んで、今ではそう感じるようになっていますが、元々はそう感じていませんでした。
でも、今回焼いた天然酵母パンからはドライイーストの匂いはしません(使ってないから当たり前ですが)。で、小麦の良い匂いだけがするんです。
香りの面ではいつものパンより満足のいく仕上がりでした。
食感の方はというと、上にも書きましたがしっとりした感じに仕上がりました。
こちらは元種を作る工程で小麦粉が水に浸ってる時間が長い事に関係するみたいです。しっかり小麦粉が水分を包み込んだ感じになってますね。特にミミの部分の食感はいつもと全く違いました。
例えると、いつものドライイーストで焼いたパンだと、ミミは市販のバゲットのようなパリパリした固さになりますが、今回の天然酵母で焼いたパンの耳は市販の食パンの様な柔らかな感じでした。
この辺は好みの分かれる所でしょうが、十分美味しいと言える出来上がりでした。
今後は元種の比率を変えてチャレンジしたり、手でコネてオーブンで焼いてみたりするつもりよ。
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