須佐之男命(すさのおのみこと)が退治したとされる八岐大蛇。一般的には首が8本あるヒドラの様な化け物と捉えられていますが、その他にも色々な説があったりします。その諸説の中の一つが八岐大蛇は「斐伊川」であるというもの。度々氾濫する「斐伊川」が化け物の様に恐れられていたというものです。私は最近この説を知ってちょっと興味が湧いたので現地に行って色々関連するものを見てきました。
八岐大蛇伝説に係る場所や神社
調べると八岐大蛇に関係する場所や施設は山のように出てきます。
ちなみに須佐之男命が八岐大蛇を退治する下りはメジャーな話だと思うので省略しますね。
八岐大蛇は化け物じゃない?
元々私は須佐之男命の八岐大蛇退治のお話は”神話(物語)”として読んでいたので、普通に首が8本ある龍の様な化け物を退治する英雄譚だと思っていました。
ただ、古事記や日本書紀を解説するYoutube動画などを見ていると、八岐大蛇は盗賊団を例えているとか、天叢雲剣(草薙剣)を得ることから製鉄集団のことだなんて説があることを知りました。
で、最近知ったのが八岐大蛇は斐伊川を指しているという説でした。
八岐大蛇=斐伊川説の概要
八岐大蛇=斐伊川説は、度々氾濫していた斐伊川が化け物に例えられているというものです。なので「退治」=「治水」となります。
ちなみに古事記にある八岐大蛇の特徴をピックアップするとこんな感じです。
- 目はほおずきの様に赤い
- 一つの胴体に、八つの頭、八つの尾がある(八は「数え切れない位多くの」という意味にも取れる)
- 体には苔ばかりか、杉や檜まで生えている
- 長さは八つの谷をわたり、八つの山をこえる程大きい
- 腹はいつも血がにじんでただれている
これに対して「斐伊川説」ではこんな解説がされています。
1.の目が赤いというのには特に解説がありませんでしたが、2.は斐伊川にたくさんの流れ込む川があったり、支流があることを指している。
3.では大きな化け物なら苔位生えているでしょうが、杉や檜となるとちょっと想像がつかない。しかし川なら当然のこと。
4.は八岐大蛇が”大きい”ということを表現しているのでしょうが、化け物の大きさを表現するのに「八つの山をこえる」とは言うかもしれませんが、「八つの谷をわたる」とは表現しないのでは?でも、川ならしっくりくる。
そして5.ですが、斐伊川上流には砂鉄が取れる地域がある為、下流などでは川が赤く見えるからだそうです。
実際赤く見えるな~なんて思ったのですが、斐伊川沿いの道ってなんか大規模な工事とかしてて車を止められるところが見つからないんですよね(なので写真を撮って来れませんでした)。
という訳でストリートビューを貼っておくわね。赤く見えるかしら?
「斐伊川説」に関わりのある場所!?
八岐大蛇=斐伊川説を初めて聞いた時、妙に納得してしまったので、改めて関連する場所を見に行ってみたいな~と思い、先日回ってきました。
一般的な化け物説に関連する場所も含まれています。
訪れた場所は以下の通りです。
- 稲田神社・・・櫛名田比売(くしなだひめは櫛稲田姫とも書かれることがあります)の生まれた地とされている場所にある神社です。「斐伊川説」では櫛名田比売は女性ではなく、稲田を指しているとも解釈されています(斐伊川の氾濫で稲田が荒らされるのを例えている)。という訳でこの神社は「化け物説」でも「斐伊川説」でも舞台の中心となる場所にあるということになりそうです。
- 八重垣神社・・・稲田神社同様、櫛名田比売を祀っている神社です。斐伊川からもちょっと離れていて八岐大蛇伝説とはあまり関係無さそうでしたが、櫛名田比売つながりで行ってきました。
- 船通山・・・須佐之男命が降り立った地と言われ、かつ斐伊川の源流がある所です。
- 天が淵・・・八岐大蛇の住処と伝わる場所です。
- 斐伊神社、八本杉・・・八岐大蛇の切り落とされた8本の首を埋めたとされている地です。
八岐大蛇関連の神社、場所巡り
という訳で、今回行ってきた場所の紹介です。
稲田神社
<主祭神>
- 櫛名田比売
<配神>
- 大国主神
- 須佐之男命
- 大山祗命
ここは須佐之男命が八岐大蛇から救い、後に奥さんになる櫛名田比売が生まれた場所だと言われています。
稲田神社には早朝(朝7時)に訪れました。早朝の神社はとても気持ちが良いわね。
稲田神社への行き方
私は車でしたから、ネット情報を転載しますが「JR木次線出雲横田駅から徒歩15分」だそうです。
周辺の道は分かり易いので、車ならナビをセットしてれば容易に着くと思います。駐車場は車が10台位は止められそうな大きめのものがありました。
入り口(鳥居)
稲田神社の入り口(鳥居)まではこんな感じに轍のある道が続いていたので、この先に駐車場があるのかと車で入っていってしまいました。
駐車場はずっと手前にあるので注意です。
ずっと轍は続いていますが、私はこの辺で「ん?」となって一旦引き返しました。
恐らくこの轍は社務所(蕎麦屋)関連の車の跡なのでしょう。
参道
鳥居をくぐってからの参道は結構長めです。
ここが櫛名田比売の生家だとすればかなり大きなお屋敷って感じですね(櫛名田比売は村長夫婦の娘とされています)。
社務所(蕎麦屋?)
拝殿手前には社務所兼蕎麦屋があります。何故蕎麦屋があるのかは分かりませんが、人気の蕎麦屋だそうです。
私が行ったときは早朝だったのでまだ開店していませんでした。
拝殿
結構新しめの拝殿だな~なんて眺めていたのですが、調べたら昭和に入ってから石炭で成功した大金持ちの人の寄進によって建てられたもののようですね。
本殿
拝殿と本殿はかなり離れた造りになっていました。ここまで離れている神社は私は始めてみました。
櫛名田比売が祀られているからでしょうか?拝殿や本殿の其処ここに「姫」と書いてありました。
お蕎麦屋さんが結構人気とのこともあり、恐らく多くの人が来る神社だと思いますが、早朝訪れたお陰で誰一人として他の参拝者と会うことはありませんでした。
八重垣神社
<主祭神>
- 須佐之男命
- 櫛名田比売
- 大国主神
- 青幡佐久佐日古命
この神社は八岐大蛇伝説のある土地(雲南、奥出雲)からはちょっと離れた所(松江)にあります。
須佐之男命が八岐大蛇退治をする間、櫛名田比売を避難させた場所と伝えられています。
八重垣神社への行き方
私は車でしたから、ネット情報を転載すると、JR松江駅の松江市営バス4番乗り場より乗車して、八重垣神社バス停下車(約20分)で到着します。
私が訪れた時もバスでやってくる人が何組かいました。
駐車場は鳥居のすぐ横に4台分(内2台は障害者用)、少し離れた所に大きな駐車場がありました。
県道沿いにあるので車で向かう場合もかなり分かり易いと思います。
鳥居
ぱっと見は比較的大きな道路に面していて、東京なんかにある神社とイメージが被ります。
手水舎
こちらの神社は参拝者が多い為か、緊急事態宣言解除後も柄杓は置いていませんでした。
随神門
随神門のサイズ感なども私が東京の神社などで良く見たことのある感じでした。
こちらに来てやたら巨大だったり、歴史があるものを見慣れたせいか、ちょっと懐かしい感じもしますね。
拝殿
写真では他に人がいないように写っていますが、平日のわりに人が多いな~といった感じでした。
本殿
参拝客も多かったのですが、神職の方が複数忙しそうにしていたのが印象的でした。
例祭(10/20)が近いからかも知れません。
歌碑
須佐之男命が日本初の和歌「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を」と読んだのは須我神社でのこととされています。
八重垣神社の社名はこの歌から来ているので、その歌の碑がありました。
鏡の池
櫛名田比売はこちらに避難している間、飲料水として使ったり、鏡として使ったとされている池です。
<鏡の池の縁占い?>
占い用紙を浮かべ、硬貨(十円または百円)をそっと乗せるという縁占いがこの池で出来るようです。
早く沈めば(十五分以内)縁が早く、遅く沈む(三十分以上)と縁が遅く、近くで沈むと身近な人、遠くで沈むと遠方の人とご縁があるとなるようです。
いかにも女性が好きそうな占いですが、実際たくさんの女性がやってました。ちなみに上の占いの基準にもありますが、この占い用紙・・・なかなか沈みません。
池の写真を近くで取りたいな~と思って前の人の紙が沈むのを待っていたのですが、いくら待っても沈みません。そうこうしている内に次の参拝客が来てしまうといった感じでした(ここで相当足止めされました)。
ちなみに紙が沈むのを諦めて帰ってしまう人もいました(500円玉とかでやったほうが良いかもしれません)。
ちなみにうまくピントが合わず写せなかったのですが、池に沈んだ紙がドロドロになって物凄く汚らしいです(特に沢山沈んでいる手前側)。
主祭神が飲料に用いた池をこんなにして良いのかしらね?
船通山
船通山は須佐之男命が降り立った地であり、斐伊川の源流がある所でもあります。
八岐大蛇が斐伊川とすればストーリー的につながるのよね。
船通山への行き方
船通山は標高1,140mで比較的登りやすい山の様で、いくつかの登山ルートがあります。登山口辺りにはキャンプ場もあるようで結構メジャーな場所なのかもしれません。
私は南側の県道15号の方から「船通山登山口 上萩山コース」へアプローチしたのですが・・・
道が狭くてひるんで途中で引き返してしまいました。
一人だとトラブった時が怖くてこういう狭い道って進んで行きにくいのよね。
船通山登山口の入り口
県道15号側の登山口入り口です。
ちなみにこの道は私有地(持ち主不明で登記はされていない)らしく、入っても良いけど山菜とかを取ると窃盗罪になる旨の注意書きがありました。
熊注意の看板アリです。
この辺りもひるんだ要因の一つではありますね(狭くて暗い道で脱輪でもして、車から降りた時にクマさんと”こんにちは”・・・なんて想像力あり過ぎですかね?)。
この登山道へ向かう道(2km位あるようです)へは一応突入したのですが、あまりに細く険しそうな道だったのでUターンできそうな所を探して途中で引き返してきました。写真を撮ってこなかったのでストリートビューを張っておきます。
ちなみにいつも不思議なんですが、細く険しい道で怖いな~なんて思った道を後でストリートビューで見ると普通の道に見えるんですよね(実際はこの道が2kmも続くのかよ~って絶望感が漂う程の暗くてうっそうとした道だったのですが)。
ということで、恐らくあれが船通山だろうという山を写真に収めて次に向かいました。
ちなみにここから出雲横田の方に抜ける県道15号線も相当な道だったわ(でもやっぱりストリートビューで見ると大したこと無いのよね・・・)。
天が淵
天が淵は八岐大蛇の住処と言われている場所です。
場所は斐伊川になります。
天が淵への行き方
天が淵は国道314号線沿いのこんな場所にあります。
ちょっとした待避所みたいな感じですから、早い車の流れに乗っていると止まれないかもしれません(ちなみに通り過ぎるとしばらくUターンできるような場所はありません)。
天が淵
ここは河原まで階段で降りることが出来ます。
大昔なら確かに「化け物が住んでる」ということが信じられたであろう雰囲気はありますが、現代人の私は何となく川の氾濫地点と言われた方が腑に落ちてしまいます。
天が淵よりちょっと上流ですが
天が淵よりちょっと上流ですが、現在はダムがあって「さくらおろち湖」が出来ています(道の駅 おろちの里より撮影)。
ここなら「化け物」が住んでいるって言われれば多少の説得力があるんですけどね。
まぁ大昔にダムは無いから。
斐伊神社、八本杉
<主祭神>
- 須佐之男命
- 櫛名田比売
- 伊都之尾羽張命
<相殿>
- 樋速夜比古命
- 甕速日命
- 火炫毘古命
神社自体はあまり八岐大蛇伝説と関係があるような云われは無いようです。
ただ、この神社のすぐそばに八岐大蛇の八本の首を埋めたとされる八本杉があるのよね。
斐伊神社、八本杉への行き方
かなりマイナーな神社の様で、公式HPも無いし、アクセスについて書いてある情報がありません。地図を見た感じではJR木次駅から徒歩1kmといった所でしょうか。
ちなみに私は車で行きましたが、物凄く苦戦しました。周りは住宅街でかつ物凄く狭い道が多く、ナビをセットしていても全く役に立ちませんでした。
こちらが斐伊神社の前の道です。ちなみに目の前の踏切は幅的に歩行者しか通れません。最初に近くを通った時はこの踏切の向こう側辺りでナビが「目的地に着きました」っと言いだしてどこに神社があるか分かりませんでした。
車を止めている場所も果たして神社の駐車場という事で良いのだろうか?って感じでした(他に車が止まっていたけど、神社に人はいなかったので違ったかもです)。
入り口
住宅地にある割には結構いい雰囲気を漂わせる神社でした。
拝殿
本殿
八岐大蛇関連でいうと、こちらの神社より次の八本杉の方が本命となります。
この神社から歩きなら結構簡単につきそうだけど、車だとこれまた大変だったのよ。
八本杉
斐伊神社からだと上の写真にもある、神社の目の前の人しか通れない踏切を渡ってすぐの所です。なので徒歩なら簡単に行けそうですが、車だと大変です。しかもこの八本杉の目の前の道は入り口がやたらと狭かったんです(私の場合、細い路地の5差路を鋭角に曲がって入っていったので一苦労でした)。
ちなみに名称通りちゃんと杉の木は8本あります。
退治され頭を切り落とされた八岐大蛇が復活しないよう、埋めてその上に杉の木を植えたというのがいわれのようです。
ちなみにどれも立派な杉の木ですが、いずれも明治初期に洪水の後に植え替えられたもののようです。
はてさて、八岐大蛇の正体や如何に?って感じね。でも、八岐大蛇=斐伊川説が正しいとすると須佐之男命って治水も出来たってことになるのよね。なんかイメージ変わって来るわね。
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